偶像

だから彼女たちのことを偶像と呼ぶんだなと梅山恋和ちゃんを見て僕は理解した。

そのくらいに彼女にはリアリティーが欠けていた。37超個ある細胞ひとつひとつが恐ろしい程に美しくて、その集合体である彼女はまるで作品だなと感じた。ひとつひとつの所作が洗礼された可愛いでありニセモノではなく紛れもない純粋なホンモノだった。立てば芍薬座れば牡丹踊る姿は百合の花。そんな言葉がピッタリだった。


だからこそ僕は彼女を殺したくなった。

いや、正確には彼女の時のを止めたいと思った。そのためには殺してホルマリン漬けにするしかないのかな、なんて思った。これが詭弁だなんてことはもちろん理解してるし本当にそうするわけではない。けれども、おもわず殺したいと思ってしまうほど彼女は完成していて時が彼女を変えていく事実が震えるほど恐ろしかった。タバコ屋で買ったブタメンを地べたで食べていたいつかの少年たちがコンビニで買ったアルコールを路上で呷るように、手を繋ぐことさえ恥ずかしかったあの日の少女が純白のドレスを纏い人前で愛を誓い接吻をするように時は人間を変えていく。一挙手一投足全てが美であった彼女から時が奪っていく可能性がある。記憶の中だけで彼女の美しさを保存して鑑賞することは無理だとわかっていたからこそどうしようもない気持ちになっていた。

 

こんなことを考えながら並んでいたら自分の番が来て彼女と対面した。そこで世界が変わった。

 

彼女の細く美しい手を魑魅のように醜い雑種が触れていいのか躊躇いながら握った。彼女の手には真冬の日向のような優しい暖かさがあった。彼女の目は紫金紅葫蘆の如く吸い込んで行くような魔力があった。本当に綺麗で美しくて圧倒され感嘆の声が思わず漏れた。

「可愛い...」

 

彼女は小さいながらも美しく非の打ち所がひとつもない唇を動かした。

「ありがとうございます」

 

彼女が発した音波を僕の鼓膜が受け止めた瞬間、恋に落ちる音が聞こえた。

僕は彼女の時を止めたかった。でも、今はそんなことは思わない。人間の歪さや社会の淀みに攻撃され傷つき変わり果てた彼女さえも見てみたいそう思った。どんなに醜く汚らしくて見るに耐えない姿になってもきっと彼女の手は暖かく目は魔力を持っているんだろうなと確信した。時はいつでも魔法の杖で様々なものを変えていく。道の景色であったり人間関係であったりと本当に様々なもの。それでも変わらないものも確かにあり波の音や潮の香りや彼女のことを好きだったこととか。

その全てを愛せる自信はないけど、愛してみたい。

 

2018年は梅山恋和で行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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